2025年3月7日

子どもが勝手にゲームに30万も使っていた…お金は払わなきゃダメ?

こんにちは。

株式会社マモル代表のくまゆうこです。

子どもが知らぬ間にスマホゲームで30万円も課金していた!」そんな信じがたいトラブルが、いま現実に多発しています。ニュースサイトにも様々な事例が溢れています。クレジットカードや電子決済を使って、親の知らないうちに高額課金してしまうケースは後を絶ちません。果たしてこのお金、本当に払わなければいけないのでしょうか?突然ふりかかる“課金トラブル”の真相と対処法を、弁護士の方に監修いただき、わかりやすく解説します。

子どもが勝手にゲームに30万も使っていた…お金は払わなきゃダメ?

Q.ちょっと目を離した隙に、子どもが勝手に私のスマートフォンを使って、ゲームの課金をしてしまいました。金額はなんと30万円。これって払わないといけないのでしょうか?

A.お子様が未成年であった場合、保護者の同意なく未成年が契約をした場合に適応できる「未成年者契約の取り消し」に当てはまり、支払いを無効にできる可能性があります。

ただし、「未成年」が「無断で課金した」という証明をする必要があり、ハードルが高いことが予想されます。

原則は取り消すことができるが、認められないケースも多々ある

未成年者が法定代理人(主に親権者)の同意を得ないで行った取引行為については、民法上原則として取り消すことができます。

このことは電子取引であっても変わりはありません。

ただし、取り消すことができない場合もあります。

・法定代理人が処分を許した財産の範囲内で取引をした場合(民法5条)

・未成年者が詐術を用いて取引をした場合(民法21条)

上記に当たると、取り消すことができなくなる可能性があります。

「処分を許した財産」とは、例えば、法定代理人(通常はご両親に当たります)が小遣いとして渡したものをいいます。

その金額分、ゲームに課金しても、その金額は「目的を定めないで処分を許した財産」となり、取り消すことができません。

また、法定代理人名義のクレジットカードの利用を認めていた場合も、実際に利用した金額にもよりますが、通常であれば「目的を定めないで処分を許した財産」となり、取り消すことができません。

「詐術」とは、判例上、未成年者が、他の言動などと相まって、相手を誤信させたり、誤信を強めたと認められるときは詐術に当たるとされています。

つまり、取引相手やゲームのサイトで、年齢を偽っていたり、嘘の情報を誤信させるような行為を行っていると「未成年者が詐術を用いて取引をした場合」を判断され、取り引きを取り消すことができない可能性があるのです。

したがって、未成年者が故意で年齢確認画面に成年に当たるような虚偽の生年月日を入力し、それにより、事業者も相手方が成年であると判断した場合には、取引を取り消すことができなくなる可能性があります。

虚偽の判断は難しく、基本的には総合判断が求められるようです。

参考までに「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(令和2年8月経済産業省)では取り消すことができる例として、次のようなケースをあげています。

・単に「成年ですか」との問いに「はい」のボタンをクリックさせる場合

・利用規約の一部に「未成年者の場合は法定代理人の同意が必要です」と記載してあるのみである場合

お子様が、ゲーム内でお子様でも十分に理解し注意できる年齢確認画面があるにもかかわらず、成人であると意図的に偽るために虚偽の生年月日を入力してしまった場合は、事業者が未成年による課金であると判断できないとされ、取り消しが認められない可能性があるので注意が必要です。

また、もしお子様に未成年者用のスマホを使わせ、親がスマホの利用料を負担している場合、親が上限額を設定していたとすると、親がその上限額の範囲内で有料サービスの利用についてあらかじめ包括的に合意を与えていたとも考えられるので、その範囲内では未成年者取消は認められないでしょう。

日頃からネットリテラシーだけではなく、お金の使い方についても学びの場を設けるべき

契約の取消しをした場合には、契約は遡って無効となることにより(民法第121条)、代金請求の根拠がないことになり、請求に応じる法的義務はなくなります。

未成年者は、商品の引渡しなどを受けているのであれば、現存利益の範囲で返還する義務を負います。

また、代金の決済にクレジットカードやキャリア課金等が利用されているなど決済業者が介在している場合には、取消し後の法律関係は、これらの事業者との契約内容によることになりますので、一度契約内容を確認しておいてください。

ご両親には、普段から、お子様にいわゆるネットリテラシーだけではなく、クレジットカードやお金の使い方についてのリテラシーについても、学ぶ場を設け、身につけさせることが求められます。

さらに、パスワードの入力を取引のたびに求められる設定にしつつ、未成年者がわかりにくいパスワードを設定するなどしておくことが重要となります。

未成年者に親のスマホを使わせる場合や子どもにスマホを持たせる場合、子どもにタブレットや家庭用ゲーム機などの端末を持たせる場合には、親と子どもでアカウントを使い分け、承諾なしでのアプリ内課金ができなくなる設定にすることも重要です。

以上で解説したように、判断能力が未成熟な未成年者を保護するための制度があります。

ただし、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」は2022年4月1日から施行されることになります。

このことにより、18歳・19歳の若年成年の消費者被害が拡大することが予想されるため、国には若年成年の消費者被害を防止するための施策が望まれています。

記事監修

コモンズ法律事務所

弁護士  森田智博

※この記事は2022年に監修いただいたものです。

 

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