いじめに繋がる 学校教育が避けたいマイナスの笑い 教育漫才
このテキストは、2018年11月13日にPodcast「くまゆうこの子育て初耳学」で放送された番組の書き起こし記事です。
くま:みなさんこんにちは。子育て初耳学パーソナリティのくまゆうこです。今日も「教育漫才で子供たちが変わる」の著書、公立埼玉越ヶ谷小学校校長田畑栄一さんに来ていただいています。
田畑校長:こんにちは。
くま:前回はですね、いろいろ教育漫才ってなんなの?っていうふうなことですね。あと、どういうことを子どもたちがやっているかみたいなのも聞かせていただいたんですが。私最初にこの教育漫才って聞いた時に、すごく新しい試みなので「あ、私立の小学校なのかな」と思ったんですね。私立小学校、中学校なのかなと思ったら公立なんですよね、公立でこういう新しい試みができるんだってちょっとびっくりしたんですけども、これってどういう経緯で、どうやったら公立でできるんですか?
田畑校長:普通にできると思いますよ。
くま:普通にできる?ちょっと全国の校長先生、みなさん、聞いてますか?保護者の方。
田畑校長:学習指導要領があるじゃないですか。あれはあくまでも基準なんですよ。あれをすべてきちんと完成させなきゃいけないっていうことじゃないんですよ。あれを参考にして、ある程度のオリジナリティっていうのが許されるわけなんですよ。
くま:学校っていうのは絶対やれっていうんじゃなくて、沿っていれば別に校長先生のいろいろなアレンジは可能ってことなんですか?
田畑校長:もちろんそうです。特にですね、新しく新学習指導要領にかわります。来年度から。その中で総合的な学習の時間っていうのがあります。これはですね、各学校のオリジナリティをすごく求めてるんですよ。
くま:出していいんですね?逆に。
田畑校長:もちろんですよ。特色を出していいんですよ。地元の教育を中に入れたりとか地域に発信したりとかってすることがすごく求められてるんですよ。で、教科横断的っていうかたちで、例えば国語と算数、国語と総合とか、社会と理科とか様々に組み合わせてやりましょうっていう、いわゆる1つの教科に縛るんじゃなくてやっていきましょうっていうのが1つ大きな狙いにあるんですよ。そして地域との連携っていうのもあるんですよ。そう考えた時に、かつて古い学習指導要領の中で総合的な学習の時間は各学校にっていう感じであったんですけども、文科省が例えば国際理解、福祉、環境とかっていうことを掲げてそれをベースにしてですね、日本全国がほとんどそれと同じような金太郎飴式の教育をやるようになったんですよ。なので、恐らく文科省がそういうカリキュラムマネジメントで求めてきている地域の教育力を活用しましょう、教科横断的っていうのはまさにそれぞれのオリジナリティを本気で出して欲しいっていう願いのもとなんですよ。なので、私は前任校で漫才を入れたっていうのはやはり子どもの実態を考えてやらざるを得ないっていうことを思ってですね、先生方とお話をして共通理解をはかって進めてきたところなんです。だから、誰でもどこでもできるんですよ。
くま:これ実はじゃあ、誰でもどこでも、今日今聞いてて「あ、おもしろそうだな、うちの小学校にも中学校にもあるといいな」と思ったらできるんですね?
田畑校長:できます。特に総合的な学習の時間を活用するとですね、有効にできると思います。
くま:そうなんですね。なんかやっぱり公立ってすごく、さっきおっしゃった金太郎飴というか同じことをやってるみたいな、親としてはイメージがあるんですよね。実はそんなことないってことなんですね。
田畑校長:やはり公教育なのである程度のラインっていうのは必要かなっていうふうに思いますが、まったくそれに縛られてるってわけでもないので。その中で個性とか学校の特色が出せるっていうふうに思いますし、出さなきゃいけないと思います。
くま:そうですよね。で、私はこの本をちょっと読んで書いてあったのが、先生が「不登校ゼロを目指す」とか「いじめは絶対ダメだ」みたいなことを言われてるんですけど。私が…いつもの印象だと「なんかまぁ不登校最近多いから仕方ないよね」とか、「いじめってあるから仕方ないよね」っておっしゃる先生が実は多いなという印象だったんですけども。先生はそれを「絶対ダメだ」っていうふうに言われているのはすごく驚いたんですよね。
田畑校長:確かに出てしかるべきところがあるかなっていうふうに思いますし、いじめが起きてしまうのもわかるところはあります。ところがですね、教育っていうのは理想、理念に向かって進まなきゃいけないところがあるんですよ。例えば学校長が「いじめしょうがないよね」って言ったら、先生方はうちのクラスで起きてもしょうがないって気が緩みます。で、見逃します。そこに大変大きな問題が起きて、不登校や自殺に繋がっていく傾向が多々全国で起きてるかなという気がします。つまり校長や学校がいじめは絶対許さないよ、そのためにこうするよって。私は不登校に関しては、教育活動は全員の子供が揃って初めて教育活動が始まるという理念を持っています。なので、不登校の子どもは基本的にみんなですくいあげたいというふうに思っていてですね、学校に合わせてもらうんじゃなくて学校がその子に合わせます。そういうふうに今変わってきてると思います。明治以来ですね、座学で黒板、教師に向かって座っていることに関してですね、子どもたちが声をあげてると思うんですよ。その不登校、自殺っていうのは。
くま:そうね、それがおかしいというか、そういうSOSっていうことなんですよね?
田畑校長:そうなんです。なので、抜本的に変えていかないと子どもたちのこの不登校の数とかいじめの数っていうのは減っていかないんじゃないかなと思っています。多様化の中で教育界も緩やかに変わっていかないとですね、子どもたちのニーズに答えられないんじゃないかなというふうに思っていて。私はこの叫び声をあげている子どもたちこそが、学校経営の理念になって学校を変えていくのかなと思っていて、私はこの子どもの叫びを真摯に受けとめて日々の教育活動に先生方と今取り組んでいるところですね。
くま:へぇ…じゃあ、先生の中で今印象としてはちょっとずつ変わってきてますか?学校。
田畑校長:学校の中は変わっていると思います。子どもたちが楽しくなってきてるっていうふうに思いますね。実は今週月曜日、火曜日修学旅行に6年生と行ってきたんですよ。
くま:先生っていうか学校のツイッターですよね。すごい写真がいっぱい。みなさんちょっと興味ある方は是非ご覧くださいね。もうツイッターでいっぱい「今ここに着きました」とかね、「ご飯こんなご飯食べました、修学旅行で」とかそんなのもあがってましたよね。
田畑校長:ありがとうございます。ぜひ見てください。その子どもたちと一緒に行った中で、4クラスあるんですけど、135人の子どもが行ったんですけども。1組から4組を解体してですね、1号車にAグループが集まってですね、それぞれのクラスが4クラス集まるような組み立てをしたんですよ。
くま:じゃあクラスはバラバラにした?シャッフルしたってことなんですか?
田畑校長:そうなんですよ。ところがですね、私1号車のバスに乗ったんですけどもまったく違和感がないんですよ。みんなで同じクラスで長い付き合いをしてきたんじゃないの?っていう感じなんですよ。つまり1学年がクラスとかって小さな単位じゃなくて1つの大きな単位になっていて円滑に回ってるってことをすごく感じたんですよ。で、子どもたちの個性をお互いに認め合ってですね、私もバスの中で実は恥ずかしいんですけども何度も涙ぐむ場面があったんですよ。あったかい場面が。
くま:それは例えばどういう?
田畑校長:あ、それはですね…
くま:言えない?そうですね。
田畑校長:恥ずかしくて言えないんですけど。本当にあったかくなってきてるなってことを感じます。
くま:そうなんですね。やっぱりそういうあったかい雰囲気とか笑いとかってすごく大事だと思うんですけど、学校ってやっぱりあんまり笑いに対してネガティブなイメージを持ってる。例えば先生が「もう笑っちゃいけません」とか「何々さんの気持ち考えなさい」みたいな感じでクラス全体に注意するので、みんなが「あ、笑いっていけないんだな」みたいなふうに思うと。ただ、子どもっていうのは笑いっていうのはいろんな笑いがたぶんあるじゃないですか。先生はそこをすごく考えられているってことなんですよね。
田畑校長:はい。日本の笑いっていうのは十把一絡げなんですよ。まとめてるんですよ。ところが良く分析してみるとですね、プラスの笑いとマイナスの笑いがあるんですよ。学校教育が避けたいのはマイナスの笑いなんですよ。
くま:そうですよね。
田畑校長:例えば1人の子どもが意見を言って間違いました。それに対して爆笑してげらげら冷笑する、嘲笑するっていう形が起きます。そうするとその子は傷つきます。そして笑って当たり前、みんなでバカにして…っていう現象が起きますので、先生はそこで注意をするわけなんです。そういうマイナスな笑いに関してはしっかりと指導をしていかなきゃいけないし、人が一生懸命言っている時には笑っちゃいけないよっていうことを繰り返し指導していくべきだっていうふうに思います。ところがですね、あったかい笑いってあるんですよ。本当に面白いことを言う子がいて爆笑してるのに、だけどなんか笑いはだめだよっていうような雰囲気があるとそういうことも出しにくくなる空気があるんですよ。
くま:そうですね、確かに。
田畑校長:学校はどっちかっていうといじめの方に重きを置くので「じゃあ、笑いはダメですよ」っていうんで、どちらかっていうと子どもたちがげらげら笑うっていうのは偶発的な笑いであったりとか、子ども同士が面白いことを言って笑うとかっていうことで、公的なみんながいるところで笑いの教育っていうのはおきてこないんですよね。私はやはりこの教育漫才っていうのはプラスの面を、笑いを学校教育に対して入れることによって人間関係がすごく柔らかくなるのでプラス効果が出るっていうことで、今こうやって本を書いたりとかいろんなところで発信していきたいなぁと思っているところです。
くま:そうですよね。だってやっぱり笑うって楽しいですもんね。
田畑校長:とっても楽しいと思います。
くま:とっても楽しいですよね。笑う門には本当福来るで本当に楽しい、だけどいわゆる人をバカにするような笑いとかそういうのはダメだよねっていうことをきちんと子どもたちに伝えて、ダメなものはダメとちゃんと言いましょうっていうところですよね。わかりました、ありがとうございます。あと、ここの本にも書いてあったんですけども、相手に伝わる印象の65パーセントが非言語っていうことで表情とか仕草が与える印象というのも大きいよねっていうこともあると思うので、やっぱりその雰囲気っていうのがすごく学校にとって大事っていうことなんですかね?
田畑校長:大きいと思います。例えばいじめの認知件数とかって全国で41万件あったんです。ですが、それ以外のところでもたくさんのいじめらしきものがあると思うんですよ。例えばいじめと認知できないもの、例えばにらみつける。
あと、歩いてる時に足音を立てて、バンッとやって「あれ?私にやってるのかな?」っていうふうなのがありますよね。
くま:ありますね。
田畑校長:そういうのは私らは棘のある教室って言ってるんですよ。
くま:棘のある教室。
田畑校長:はい。やはり棘のある教室っていうのはそのクラスの子どもたちが持ってる、先生が持ってる、発するオーラであったりとかいじめに対する認知度とか認識度がどのぐらいあるかによって違っていくのかなと思うんですよ。だからそういう意味で、教育漫才をやることによって「ウザイ」とか「死ね」とかそういう人を傷つけるようなことをやっちゃダメだよっていうことを笑いながら教えていきますよね。だからこれはまさに道徳教育って、心を学校全体、クラス全体として育てていくツールとして価値ある文化かなというふうに思っているところなんです。
くま:実際にこういうのをやってみなさんが、第一回目の時も言ったんですけどやっぱり「よかった」とか「また次回やりたい。今度いつあるんですか?」みたいな質問があったっていうことなので、やっぱりそういう「楽しかった」っていう気持ちが強いってことですよね。あとはなんかさっき先生不登校の話とかあったんですけども、先生の学校では自殺、不登校、いじめをさせないっていうことを徹底的にプランとして掲げられてるんですかね?
田畑校長:やってますね。スクールプランの一番上にもですね「自殺、不登校、いじめのないあたたかい笑いのある学校作り」っていうことで掲げて、それは子どもにも伝えていますし、保護者の方に、地域の方にも伝えていますし。もう旗揚げをしてですね、学校全体でそれに関しては避けようっていう形で今指導しているところですね。
くま:子どもに伝えるっていうのはいつどうやって伝えてるんですか?
田畑校長:4月の始業式の挨拶の時から、もういじめに関しては学校は100パーセント被害者側、加害者は0パーセントですよって。なぜなら文科省ではこういう定義をしてますと。被害者側の方の立場に立つようにっていうふうに定義してます。この定義を越谷小学校ではこういうふうな形で理解してますので、100パーセント、0パーセントで対応しますよっていうことをします。あともう1つはですね、いじめの場合は当事者同士ではなかなか言えない、そういうふうな関係になりますので、回りで見ている子どもたちや気が付いた子どもたちが止めたりですね、止めることが出来なければ先生や保護者に伝えるっていう形で誰かに相談するっていうことを徹底的に繰り返していますね。そういうことを4月に校長が校長講和でやります。
くま:そうなんですね。で、そういう見てる人たちもただ見てるだけじゃなくて、ちゃんとそういうのを相談しなきゃダメなんだよっていうようなことを伝えてるってことですよね。
田畑校長:そうです、はい。
くま:それは実際に先生のところに、職員室に行って、言いに来るって感じなんですかね?子どもたち。
田畑校長:そうですね。担任の先生であったりとか、話しやすい先生とか。時には保護者の方から相談があったりという形でありますね。
くま:なんかやっぱり見てて「NO」っていうのをみんなが言わなきゃいけないよっていうことなんですかね?
田畑校長:そうなんです。やはりそれが学校の雰囲気であって、空気…やはりいじめをしにくい空気を作っていって、一人一人が安心して表現できるような学校になっていくのかなっていうふうに思っています。
くま:そうですよね。先程おっしゃった、曖昧に「まぁいいんじゃない。そういうのあるよね、いじめも」なんて言い出すと、もうそこからどんどんどんどんやってもいいよね、みたいな雰囲気になるってことなんですよね。
田畑校長:そうです。私はそれが一番怖いと思いますし、やはり校長が哲学を考えなきゃいけないっていうのはそこなのかなって思っていますね。
くま:あとはやっぱり保護者もなんですかね。保護者も自分の子どもにそういうことは絶対にお母さん許さないよ、お父さん許さないよっていうことを言っていくことは大事なんですか?
田畑校長:そうですね。その親教育もやはり学校が、校長をはじめいろいろな先生方が語って学校はこう対応しますっていうことを繰り返し繰り返しご理解いただくっていうことが大事なのかなと思います。
くま:やっぱりそこは学校と保護者の信頼関係っていうところにも繋がってくるんですよね?
田畑校長:そうですね。
くま:やっぱりこの先生達だったら話が分かるとか、先生たちと同じ方向だっていうのがないと結局そこから、保護者が先生をたぶん信頼してないとかそれがもうすべてうまくいかなくなってしまうってことなんですかね。
田畑校長:そうですね。やはり一番最初にいじめの定義を多くの方…全員であって欲しいんですけれども、きちっと押さえてそこから学校生活をスタートするっていうのが大事なのかなと思いますね。
くま:じゃあ、先生の方ではちゃんと4月の段階でこういうことはダメだっていうことをちゃんと言ってるってことなんですね。
田畑校長:そうなんです。そして私のところから学級担任に落とし込んでもらって、学級指導でさらに深めていくっていう形を取ってますね。
くま:そうなんですね。いやぁ、これはすごく今はたぶんやってないというか、そうじゃない学校もたくさんあると思うので。
田畑校長:信じられません。
~続きはPodcastでお楽しみください~
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第3回の田畑校長とのPodcast
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