♯16 【子供に幸せの意味を教えれますか?】哲学者 大竹稽に聞く幸福論
stand.fmで配信中「くまゆうこの教育子育て相談室」
ITでいじめのサインを見逃さない 株式会社マモル代表 くまゆうこが日々の事業の活動から寄せられた相談や見えてきたこと、聞いてきたことをゲストの方と一緒に考える番組です。
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第16回は、子供に幸せの意味を教えられるかということについて、哲学者の大竹稽さんにお聞きしました。
※本記事は、2021年2月21日にstand.fmで配信を開始した番組を書き起こしたものです。
おてらでてつがく 大竹稽さん
くま:今までは学校の先生にゲストに来てもらうことが多かったんですけれども、今回は「子育てと哲学の部屋」ということで哲学についてお話ししたいと思っています
というのも私が一切子供は道徳を学ぶより哲学を学んだ方がいいんじゃないかっていうことを Twitter でつぶやいたらかなり反応があって、みんながそうだそうだ哲学知りたいってことだったのでね、ただ哲学って難しいイメージなのでですね、今日は分かりやすく解説していただこうと思ってゲストに哲学者の大竹さんに来ていただいてます。
くま:大竹さんは 60分で分かるカミュのペストとか超訳モンテーニュっていう哲学の本をたくさん出されてると思うんですけれども、あとお寺で哲学教室も開いてらっしゃるんですよね。
大竹先生:はい。
くま:今日は実はお寺からですよね。
大竹先生:はいそうなんですよ、静かですね。
くま:そう、静かで。畳久しぶり。
大竹先生:畳の上ですね。
くま:畳、落ち着きますね。
大竹先生:はい、落ち着きます、はい。
フランスの哲学先生アラン「幸せとは」
くま:という訳で哲学についてお話したいんですけども、今日のテーマは幸せ、ちょっと難しいテーマなんですけど小学生中学生といろいろ話していると、たまに私幸せだとか幸せじゃないとか子供達が幸せってことがよくあるんですね。その時に幸せなんだろうっていう話をよくするんですけれども、もちろん人によって違うと思うんですが、まず幸せについて今日は哲学者としていかがですか。
大竹先生:はいそうですね。僕の専門がフランス哲学でして、どちらかと言うと何て言うんでしょう、皆さんに届く、皆さんのハートを射抜く哲学者を紹介したいと思いますので、フランスのアランという哲学者を紹介したいなと思います。
くま:アランってどういう方なんですか。
大竹先生:まず皆さんにもしかしたら読まれている本があると思うんですけど、それが幸福論という本でして、実際世界三大幸福論の一つを書いた幸福論の著者でもあるんですけど、フランス本国ではですね哲学先生と。
くま:哲学先生。
大竹先生:哲学教授じゃなくて哲学先生としてすごく馴染みのある哲学者なんですね。
くま:あーそうなんですね、さっきの世界三大幸福論でそれは誰。
大竹先生:あとはラッセルっていうイギリスの哲学者、ヒュリティーという宗教者、まあ法学者でもあるんですけど、その二人が書いたものとアランが書いたものを合わせて三大幸福論と。
大竹先生:まずラッセルは論理学者でもあるし数学者でもあるので、とても理論が精密なんですね。組み立て、それこそ数学のひとつの邂逅を組み立てるような綿密な論じ方をする。もう一人ヒュリティーっていう人は宗教者でもあるので、神と人間との関わりから幸せを論じる。
大竹先生:でアランという人は、実は幸福論と訳されてるんですけど、本来の題名はプロポシュルボヌール(Propos sur le bonheur)というタイトルで。
くま:横文字が来ました。
大竹先生:幸福についてのプロポっていうのが本来の題なんですね。このプロポっていうのが決して論じるものじゃなくて、新聞の一般読者対象に幸せっていうものを一緒に考えていくようなしつらえになってますので、決して議論・論理ではないところが大きな特徴になっていますね。
くま:ちょっと分かりやすいって感じですか。
大竹先生:そうなんです。
くま:そういうことなんですね。
大竹先生:だから皆さんに届くんじゃないかと思って、ぜひアランを。
くま:そうですね分かりました、ありがとうございます。でアランは幸福論で幸せとは何だと言ってるんですか。
大竹先生:はい、幸せの定義をするのではなくて、幸せというものと人間のかかわり方を論じる、ああ論じるのではなくお話をしてるんですけれども、例えばこんな話があります。
幸福になることを意志しなければならない、そのために努力しなければならない。王子のように座って待っていたら、やってくるのは悲しみばかりになるだろう
とかですね。
くま:そうか、幸せになるには努力をしないといけないってことですね。
大竹先生:はい。後はですね
幸せのためにはまず微笑んでみよう、力ずくでも微笑んでみよう
他人の幸福を考えてはならない、確かにそうだが自分を愛してくれる人々のためにまず何よりすべきことは自分が幸福になることだ
と。
いかがでしょうか。
くま:これ、子育ての時によく言われる言葉ですよね。
お母さんが幸せに楽しくならないと子供も楽しくないよ、みたいなことをよく言うんですけど、なんかちょっとそれに似てますよね。
大竹先生:そうですね、まさにですね。自分自身っていうものが幸せである、楽しんでいるっていう実感があって、ようやく人も幸せにすることができる。
くま:そうですよね、自分だって不幸で毎日悲しかったら人を幸せにできないですよね。
大竹先生:はい、ただ僕は子供に関わる人たちみんなに伝えたいんですけど、子供に関わる大人たちが眉をひそめて腕組みして口を結んでたら、誰もこの幸せにならないですよ。
くま:そうですよね。
大竹先生:でもそこで大人達がはつらつとして笑顔で生き生きと活動していたら、そりゃ子供達はやっぱり幸せだし楽しいって考えるでしょう、感じるでしょうね。
くま:そうですよね。
大竹先生:それはやっぱりどの立場であっても子供と関わる人達はそういう風な人たちであってほしいなと思うんですよ。
力ずくでも微笑んじゃおう 笑うから幸せがやってくる
くま:一番最初の言葉も私好きで、幸せだから笑うんじゃなくてってことですよね。
大竹先生:はい、そうなんです。
くま:笑うから幸せ、逆ってことなんですよね。
大竹先生:はい、フランスの哲学者の得意ジャンルなんですよ。
くま:逆に言うやつが?
大竹先生:はい、例えばですねアランっていう人は他にも
目標が見つかったら動くんじゃなくて、動くから目標が見つかるんだって。
くま:ああそうね、確かに。
大竹先生:へえそうねって思いますよね。
くま:そうですね。
大竹先生:多くの人たちってなりたいものが見つかるからそこに向かって行くってまずゴールありきで行くじゃないですか、逆って言うんですよね。まずなぜ歩き始めてるとゴールが見つかってくる。
くま:そうね。
大竹先生:ここら辺をうまく表現しているのが、微笑むから幸せがやってくると。幸せがやってくるというか幸せになるということなんでしょうね。これはだから幸せだから微笑むんじゃなくてまず微笑んじゃおと。力ずくでもって言ってるのがポイントですよね。
くま:これいい。だからやっぱり悲しいことがあって泣いたりするのも大事だけども、ある程度になったら、自分で自分を楽しませるじゃないけど、そういうことですよね。
大竹先生:はい、ここで一つのポイントになるのは、人間というのはそもそも人と関わっている人間ですよね、人の間と書くぐらいですので。だから決して自分が一人で笑ってるわけじゃなくって自分の顔を見てる相手がいるっていうことですよ。
だから自分の目の前でムカついてたら、ムカつく相手だったら笑っちゃいけないと思うんですけど、少なくも自分の大切な人、相手が前にいるんだったら笑おう、微笑もうと。
それがアランのいうところの意志するっていうところなんですね。努力って言葉になってるんですけど意志をするっていうことが大事だということなんでしょうね。
くま:気をつける、意識するっていうイメージ、ニュアンスなんですかね。努力って言うとちょっと苦しいイメージですけど、常にそうやって意識するとか。
あと当たり前ですけどニコニコしている人が目の前にいたらその方が楽しいですよね。
大竹先生:そうなんです。例えば食事する時だって、いかにもまずそうに食べてる人たちよりも本当に美味しそうに食べてる人たちが前にいてくれた方が、それこそカップラーメンだっておいしいなあって思えるだろうし、そういうことなんです。
くま:何に対してもポジティブというか前向きにいるってことが大切なんですね。
大竹先生:ポジティブっていう表現だと少しだけアランとずれてくるんですけど、人間ネガティブな感情は全然あっていいという考えなんですね。でもネガティブな感情に縛られてしまう、もしくはネガティブな感情のままになってしまうと怒りを撒き散らしたりとかそれこそ毒を撒き散らすことになってしまうので、そういった時こそ体で楽しい幸せって表現しようという風な、ある意味演じようということなんですね。
くま:幸せだと演じてるとそれがだんだん本当に幸せになってくるんですね。
大竹先生:いきなりポジティブ感情シンキングってものじゃなくて、まずは人間というのは感情にどうしても拘束されてしまう生き物であるということはあっさり認めてしまったあとに、だったらそういう時こそやっぱり体の表現としては、相手には礼儀を尽くして頭を下げて、もう思ってなくても感謝を言葉を述べて、笑って生きましょうと。
そうすると本当に感謝の心が生まれてくるし、本当に笑えてくるし、本当に幸せになってくるようという秘訣なんでしょうね。
くま:そうですよね、本当お父さんお母さんもそうであってほしいし、さっき言った小中学生が幸せみたいな言葉を使うって言ったんですけど、子供達も意識をすると違うかもしれないですよね。
大竹先生:そうですね、これは誰にも仮にも対して笑ってごまかせっていうわけじゃなくって、やっぱり自分が大切な人がいるっていう風な時こそ自分自身が苦しい状況にあったとしてもやっぱり幸せっていうものを少し演じてみる。それが人間関係でもあるし、相手からまた自分のところに幸せが戻ってくる秘訣っていうことなんでしょうね。
くま:そうですね、こうやって話してるとなんか楽しくなってきますね。
大竹先生:これがアランの醍醐味といいますか、やたらと抽象的なもので人の考えを宙に浮かせるのではなくて、楽しい気持ちにさせてくれないと哲学ではない。
くま:具体的だからわかりやすいですね、分かりました、ありがとうございます。
次回はもっともっと深く掘り下げて、人間の妬みとか嫉妬とかその辺をお聞きしたいと思います。
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