2019年6月28日

注目を集める「いじめ保険」その狙いとは?担当者に取材しました

521日に日本で初めて「いじめ保険」として打ち出された「弁護士保険コモン」というサービスがある。

今まであるようったようでなかった「いじめ保険」。それを深掘りするため、エール少額短期保険を訪ねた。

取材に応じてくれたのは、エール少額短期保険の営業推進部の本江俊さん。

いじめの認知件数が増加傾向にある中で生まれた「いじめ保険」

いじめの認知件数は年々増加傾向にあり、文科省が公表した平成29年度の『児童生徒の問題行動調査』によると、認知件数は約41万件にも上る。

いじめを苦に自殺する子どものニュースが度々流れ、根深い社会問題となっている中で、定義の難しい「いじめ」と、どのように向き合ったサービスなのか。

「いじめ保険」とは?

保険対象になるのは、契約者である保護者と、監督義務のある18歳未満の子ども全員だ。例えば、母親が契約した場合、18歳未満の子どもであれば何人でも保険対象になるが、父親は対象にならない。そのため、父親が利用したい場合は父親は別途契約する必要ある。

月々2,640円で弁護士への有料相談やいじめ問題解決のための弁護士委任費用、最大70%補償してくれる。

また、弁護士に無料相談ができる弁護士直通ダイヤルや弁護士検索サポートなどの付帯サービスもついている。そのため、「いじめ保険」として打ち出されているが、内容は弁護士保険であるため、保護者の会社でのパワハラやセクハラ、ママ友同士や近隣トラブルなど、法的なトラブル全般を想定している。

その中でも、いじめに関して、もっと弁護士を気軽に活用して欲しいと、担当の本江さんは言う。

いじめへの法的なアプローチ

2012年「大津市中2いじめ自殺事件」で、学校側のいじめ隠蔽や責任逃れが、世間で大きな注目を浴びたことを機に、2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行された。

にもかかわらず、学校でいじめの情報が共有されないなどの隠蔽や教育委員会の不適切な対応が後を絶たない。最近では同法の改定も注目されているほどだ。

子どもがいじめ被害を受けた際に、学校や加害者側がいじめを認めないことも多く、先生に頼ることが出来ないため、どうしたらいいかわからないという保護者も多い。

「いじめ保険」の弁護士直通ダイヤルでは、無料初期相談が約20分程度できる。それを通して、学校にいじめを認めさせるための有効な証拠を早い段階で集めるためのアドバイスを受けることができる。

また集めた証拠を元に、加害者に対する損害賠償や慰謝料請求など弁護士の活用で、いじめ問題の解決に繋げて欲しいという。

保険での「いじめ定義」とは

いじめの定義は人によって異なるため曖昧なものとされているが、「いじめ保険」では、どのような定義を設けているか尋ねた。

弁護士費用で保険金をもらうためには、同社の独自のフォーマットが設けられているという。それは医者でいうところの診断書のようなもので、弁護士が記載した内容と契約者の申告内容を確認して、保険金が降りるか判断するという。

そのため、いじめ問題に限定した定義を設けているわけではなく、「いじめ」は様々なトラブルの1つとして捉えていた。

実際に無料相談だけでいじめが解決した例も

担当の本江さんに実際に「いじめ保険」が活用された例を聞いた。

話によると、契約者さんの娘さんは小学校からいじめられやすく、中学校入学のタイミングで弁護士保険に加入。その後、中学校でもやはりいじめのようなことをされ、学校には認めてもらえなかったという。そのため、弁護士への無料相談で、学校に認めてもらうためのアドバイスを受け、保護者がそれを元に対応したところ、加害者側から謝罪があり、その後は嫌がらせやいじめもなく解決に向かったという。

この例では、保護者が子どもの特徴を把握し、事前にいじめに備えることで、いじめ被害に遭っても深刻化する前に解決したように思える。

文科省が発表している「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」でも、いじめは「どの子どもにも、どの学校においても起こり得る」としている。

そのため、「いじめ保険」「いじめに備える」というと、最初から人を警戒しているようで、ネガティブな印象があるが、学校の隠蔽体質やネットいじめなどで複雑化した学校環境を考えると、いざという時に紛争解決の専門家である弁護士を気軽に利用できるのは心強いサービスだ。

いじめは予防するもの

日本のいじめを取り巻く状況として、今までは被害者の心のケアをスクールカウンセラーが行うなど、対症療法的な対応がメインで、被害が深刻化するまでは弁護士が登場するケースはほぼなかった。

しかし、「いじめ保険」によって弁護士を利用するハードルが一気に下がり、初期段階でも証拠がそろえば、損害賠償請求や慰謝料請求の可能性が出てくる。それだけでもいじめへの抑止的な効果があると言えるのではないだろうか。

昨今では、いじめは「予防・防止」できるという考え方が注目され始め、北欧などで取り組まれているプログラムを紹介する記事やテレビ番組もある。

いじめの「予防・防止」という観点は、まだ日本では普及していないが、「いじめ保険」は、いじめに備えるという点で、いじめ予防の立場にある取り組みである。

いじめへの法的なアプローチが教育にどのような影響を与えるか注目しつつ、「いじめ保険」が深刻化するいじめ問題の一助になることを期待する。

執筆:株式会社マモル ライター村上 利光

▪️「いじめ保険」詳細は下記をご確認ください。
【専用ページURL】「弁護士保険コモン」

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