いじめの小さなサインを見逃さない 株式会社マモル立ち上げと2019年の振り返り
株式会社マモル代表のくまゆうこです。〝くま ゆうこ〟とひらがなで書いています。漢字では隈有子です。漢字だと読みづらいのと、固いイメージがあり、ひらがなにしています。ぜひ、覚えていただけたらと思います。
今回はマモル設立の経緯や会社のこと、さらに2019年を振り返っていきたいと思います。このnoteは2019年に立ち上げたサービス Advent Calendar 201912/19エントリー分として書いています。
設立の経緯「いじめで悩む子どもがいなくなってほしい!」
「いじめを早期発見し、いじめに悩む子どもがいなくなること」をめざし、2018年7月に株式会社マモルを設立しました。
いじめ対策や対処方法は世の中にたくさんあります。しかし、その多くは、いじめが起きた後にどうするかという事後対策で、「いじめを予防する」という視点が抜けていると感じました。いじめの始まりは〝からかい〟や〝いじり〟がほとんどです。でも、この〝からかい〟がエスカレートしてしまうケースはよくあります。
いじめ自体を完全になくすことは難しくても、できるだけ早く周囲がいじめに気付いて対応できれば、事態の深刻化を防げるのではないかと考え、いじめの小さな「はじまり」や子どもたちの「不安」を、誰かに伝えることができる方法を模索しました。また「これはいじめかな」と悩んだ子どもたちがコンテンツ(読み物)を読むことで心のケアができるようシステムの開発を行いました。
いじめに関することは、なかなか人に言えない、先生にも言えない、親にさえ言えない面があります。声にだして訴えることができない子ども達が「SOS」を、どこかに、誰かに、伝える手段を作れないものか、さらにSOSを受け止め、子ども達をいじめから守りたい! その思いが、子ども達を社会で守る=「マモル」という会社を立ち上げるきっかけになりました。
マモルの提供するシステムとは?
1) サイトのアクセス履歴から子どもを取り巻く環境を捉える
マモルシステムは、パソコン・スマホ・ゲーム機などから、24時間365日いつでもアクセスできます。サイト上には、いじめをはじめとした、学校で困ったこと、悩んだことに関するコンテンツがあります。サイトのアクセス行動履歴から、その学校の子ども達の間でどんなキーワードの記事が読まれているか解析し、データを学校にフィードバックすることができます。
忙しい先生方は、子ども達のすべての行動や興味を知ることは到底無理ですが、データによって現在の子ども達の状況をおおまかではあっても、方向性としてつかむことが可能です。解析結果は、学校や先生方が次にどうアクションすべきかを考える糸口として活用して頂ければと思っています。
データはあくまで「情報の分析結果」でしかありません。ですが、子ども達に今起きていることが少しでも見通せる助けになればと願っています。
2)匿名での連絡
コンテンツ(読み物)の他に、匿名での連絡もできます。
・いやなことをした
・いやなことを見た
・いやなことをされた
と、3択で今の気持ちを選んで送れます。子どもにとって、気持ちを表現するのは時に難しく、また悩んでいるうちに面倒になったり、わからなくなったりして諦めてしまうことがよくあります。そこで、ぽちっと、簡単に選ぶだけですむ形にしています。
子ども達は、嫌なことについて、なかなか正直に言葉にできません。いじめに関するアンケートは各学校でも実施されていますが、記名式にすると、そこで子どもなりにいろいろと考え、手が止まってしまうのですね。子ども達に話を聞くと、たとえ記名式でなくても、学校のアンケートでは筆跡によって自分とわかってしまうのではないか、書いている最中に見られているのではないか、といった不安もあるとわかり、とにかく最初に伝える手段はできる限り、ハードルを低くする必要があると感じたのです。
また、子どもの環境は短いタームでガラリと変わります。人間関係やいじめの状況は日々変化するので、年に1度のアンケートでは把握しきれないのが現実です。サイトへのアクセスは常にできるので、リアルタイムで状況を伝えられるのが、ウェブ上のシステムを利用するメリットだと考えています。
さて、でも、匿名にはデメリットもあるわけです。匿名だと、当然ですが、誰が誰のことを言っているのかはわかりません。具体的な解決策に直結しない面はあります。ハードルを低くした分、シンプルなので「誰かが、なにか困っているかもしれない」とはわかりますが、それだけではいじめの対処とはなり得ません。
そこで、自由記述欄も加え、詳しく内容を記入できるスペースも作りました。最初はポチっと押しただけの子どもも、「こんなことをされたって、学校に伝えたい」もう一歩踏み込んで、気持ちを伝えられるように、自由記述欄の使い方については今後もより子ども達が、今の気持ちを書きやすいように改良していければと思っています。いじめの問題は複雑な面もありますが、システムは常に更新し、なるべく子どもに寄り添う形で進化させていくつもりです。
このシステムは学校単位での申込みになります。現在は専門家チームが学校へのアドバイスをしていますが、今後は、専門家が子ども達から直接、相談にのるサービスの提供も検討中です。
なぜ〝匿名〟にしたのか
いじめの問題では、常に「傍観者」という言葉がでてきます。いじめの現場を見ている子は多くいるのに、黙って見ることしかできない、誰かに伝えることができない子は多くいます。「あの子がこんなことをされている」「○○君がやられているのはひどすぎる」飲み込んでしまった言葉を、子どもが誰かに伝えられたら、それは大きな「いじめ予防の力」になるはずです。
例えば、「みんなで無視しよう」というようなことが子供同士ではありますよね。そんなとき「こういうことはやめようよ」と言える子が1人でもいた場合、事態が大きくならなかったことが自分の経験上たくさんありました。
周りの人が「NO」や「間違っている」と言える場があれば、いじめはきっとエスカレートしないと思うのです。でも、現実は簡単ではありません。先生に伝えるのも勇気がいります。辛い思いをしている子供はもちろん、気になっているけど言い出せない、どこに言えばいいかわからないと悩む子どもも、気軽に知らせることができる場を作ることで、いじめの深刻化を防げるのではないかと思います。
言いやすい、伝えやすい、とにかく「話してくれること、教えてくれること」を第一に考え、そのために記名ではなく匿名がよいと判断しました。
3) 専門家と一緒にアドバイス
子どもの視点からマモルシステムのサービスを説明しましたが、このシステムを導入した場合、受け止める学校側にもサポートが必要です。
いじめの定義は広く、しかも深い。通報というシステムだけでは不完全のため、受け止めた学校側が「この状況はどうすべきか」と対応する時のために、弁護士や臨終心理士等に相談ができるようになっています。こうした専門家のサポートによって学校運営することで、先生方の負担を少しでも減らしていくことも大事だと思っています。
システムはあくまでツールであり手段のひとつです。マモルは子ども達・学校双方のサポートを、もっとも重視しています。
いじめってなくなるの?
マモルのサービスについて説明させて頂きましたが、この事業を行いながら、もっとも多く言われたのが「いじめはなくならないよ」という言葉でした。
私は学校で起こるトラブルや人間関係の問題をすべて否定的・悲観的には捉えていません。問題に出会ったり、解決しようと考えたりするのは、子どもの心の成長につながることもあるからです。ただ、ニュースで報じられているような、壮絶ないじめは人間としての学びの部分をはるかに越えています。
集団生活の中でいじめの「芽」は残念ながら発生してしまうわけですが、「芽」のうちに摘み取ることが大事だと思っています。マモルというシステムによって、いじめがなくなると断言するつもりは毛頭ありませんが、いじめを予防する方法や手段は、どんなことでも試してみる価値はあると思いませんか?
「どうせ、いじめはなくならない」と大人が諦めてしまったら、いじめをされている子ども達の絶望感は大きくなるばかりです。それがどんな方法であっても、いじめられたら、辛かったら、「いやなことをされた」「いやなことを見た」あるいは、そのつもりはなかったけど、考えてみたら「いやなことをしちゃったかも」いじめをしてしまった側からのSOSも受け止められれば、いじめを予防するひとつの方法になると考えています。
いじめ対応において最も重要なのは,小さなサインを見逃ず、適切な対応をすることだと思っています。
2019年の出来事トップ4
1) アクセラレーター採択
2019年9月、東京都女性ベンチャー成長促進事業APTWomenに採択されました。また同日第3期MURCアクセラレータLEAPOVERに採択されました。
APTWomanについては、東京都のホームページ都政レポートにも掲載されていました!
第4期女性ベンチャー成長促進事業(APT Women) キックオフイベントhttp://www.koho.metro.tokyo.jp/diary/report/2019/09/12/01.html
自分がやろうとしていることが受け入れられている、理解されているという証かな、と思い、率直に嬉しかったです。ここで多くの仲間と出会えたことはわたしにとっても意義深いことでした。
2)Twitterはじめました(今さら・・・)
「え、Twitterはじめたのが今年のニュース!?」といわれそうですが・・・私は、現場主義と思い込んでいるところがあって、ヒアリングや相談のほうに時間を割いていてTwitterを使っていませんでした。
が、ものは試し! 子ども達に「伝える」ことの重要さを語っている自分が、発信するツールを使っていないのはどうかな、と思いやってみると、さまざまな方向から新しい出会いに巡り会えました。このAdvent Calendar 2019も、もともとはTwitterつながりです。Twitterでは、いじめ関連のニュースをはじめ、他の気になるITサービスやマモルの告知などを発信しています。よろしければフォロー下さい!@mamoru_yuko
3)東京学芸大学との共同研究
東京学芸大学と共同研究契約を締結しました(プレスリリースはこちら).
教員の学校内でのいじめに対する意識調査を行い、インターネットサービスを活用したシステム導入に意欲的な教員の傾向と、その背景を探ることをしました。こうした数字、データを分析していくことは、システムの開発だけでなく、今後の方向性を軌道修正する判断材料にもなります。
さらにわたし自身、いじめについて社会心理学からアプローチする杉森教授とお話することで、どうしても狭くなっていきがちな「いじめ対策」の視野を、もう一度、改めてしっかりと意識し直すことができたように思います。杉森教授と学校文化について研究できることは、とても光栄に思っています。
4)Ppodcast「くまゆうこの子育て初耳学」開設
仕事柄、学校関係者や保護者に関わる事が多く、いじめ問題は教育や家庭環境も影響すると思っている事から、子育てというキーワードはとても大切だと思っています。この番組は、「子育て」をテーマに、子育て中のパパ&ママや教育に関わる全ての方に向けて、初耳な学びをお届けする番組です。
番組URL・視聴はこちら→ https://apple.co/2jZWF8
【2019年ゲスト出演情報】
■9月:性教育トイレットペーパー Sowledge代表 鶴田七瀬さん
■10月:NewsPicks発 母親をアップデートコミュニティ
なつみっくす・バーディーさん
■11月:教育漫才で、子どもたちが変わる 埼玉県公立小学校 田畑校長
■12月:ワーママメディア「LAXIC」編集長・駐在コミュニティヒメママ
世界戦略チーフ鎌田薫さん
■1月:コラムニスト 河崎環さん
最後に
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
2020年はいくつかの実証実験の予定があります。マモルの考え・ビジョンに共感してくださる方、いじめを学問として分析してみたい、子どもの安心安全に興味がある、そんな方とぜひ一緒にマモルを育てていきたいと考えています。〝いじめ〟という子どもの世界の問題について、たくさんの方々のご意見を聞かせて頂けたらと願っています。また、今後は大人のいじめ問題とも言える〝ハラスメント〟についても、同じように「早くに検知し、対応策を考える」そんなシステムやフォロー体制を築きたいと願っています。
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